妊娠五ヶ月目の戌(いぬ)の日には、神社にお参りして安産祈願を行います。
戌の日にこれを行うのは、犬の安産、多産にあやかる為であり、また、犬はよく吠えて家を守ることから、邪気を祓うと考えられ、そういった縁起を担いでの事です。
妊婦はこの日から、赤ちゃんが岩のように丈夫に育つようにと「岩田帯」という腹帯を締めます。腹帯を締める事から、この安産の習わしを「帯祝い」とも言います。
腹帯には胎児を保護する意味がある他、胎児の霊魂を安定させる信仰的な意味もあるようです。
実際にお参りして祈願を受けるときには、妊婦さんの体調を一番に考慮しなければなりません。戌の日が無理だったら別の都合の良い日でも一向に構わないですし、また、代参、つまりは妊婦の母親などが代わりに参拝する、といった方法もあります。
さて、八幡古表神社の主祭神は、神功皇后(息長帯姫尊・おきながたらしひめのみこと)様であります。
神功皇后(じんぐうこうごう)様は、第十四代仲哀天皇の皇后で、天皇が崩御あそばしてからは、子の応神天皇を身籠ったまま、神様のお告げによって三韓(朝鮮半島)に遠征されます。途中で産気づかれますが、石を抱いてこれを鎮め、半島を征服した後に日本に帰ってきて、筑紫の宇美の地で無事に応神帝をお産みになります。
天皇の幼少時には、摂政として代わりに政務を執られ、その後、子の応神天皇は歴史に残る立派な天皇となられます。
こういった御事績から、八幡古表神社の御神徳の主たるものは、安産と子育てだとされています。
また、兼務奉仕している神社には、壺神社(吉富町土屋鎮座)という御社があり、ここも安産の神様として厚く信仰されています。
御祭神の木花開耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)は、山の神であるオオヤマツミノ神の娘で、美貌の持ち主でありました。
天照大御神の孫にあたるニニギノ尊に見初められ結婚、一夜にして懐妊されます。
木花開耶姫命は出産時、産屋に火を放ち、その炎の中で、三柱の御子神を無事にご出産されます。
この安産の神様を祀る壺神社には、子安石の風習が残っています。
妊婦は、神前に積まれてある丸い小石を借りて帰り、家の神棚に置いておきます。毎日お参りして、無事出産の後にはきちんと御礼をします。
神社のそばを流れる佐井川から、同じような丸石を拾ってきて、借りた石に添えて奉納するのです。
こういった風習が今でも残っていて、地元地域だけでなく、遠方からの参詣者も多くあります。
医学の発達した現代でも、出産は一大事だと思います。
お神様たちの御加護がある事を切に願うばかりです。